
現在本邦における末期腎不全患者数は29万人を超えるに至っていますが、
今後糖尿病患者の増加、高齢化に伴いその数はさらに爆発的に増えることが予想されています。
腎臓は機能不全に陥っても透析による代償で延命は可能です。
しかし透析患者さんは幸せな生活を送れているのでしょうか。
透析患者さんが何とか社会還元をしたいと願っても、
時間的制約のため職種はかなり限定され、透析導入前とまったく同じ条件で働くのは難しいようです。
また常に食事、水分、活動範囲などの制約が付きまとい、さらに骨病変、血管病変などの
透析合併症のため腰痛や下肢痛などの耐え難い自覚症状を持つことが多いのです。
このため趣味や楽しみまでも失い生きがいをなくしてしまい、結局「やめたいけどやめられない」
「無理して生かされている」と感じさせてしまう状態になりかねません。
臨床の現場にいるとこのような悲惨な光景を現実に目の当たりにすることとなり、
すでに透析医療の限界が迫っていることを痛感します。昨今紙面を賑わせている病気腎移植という
一部の医療機関の暴走とも取れる行為や臓器売買といった犯罪行為は、
このような切羽詰った状況が背景にあるのではないではないでしょうか。
一方、医療費の高騰を伴い現在日本における透析医療に関わる国庫負担は1兆円を超えています。
また日本では透析患者のほとんどが身体障害者一級と認定されるため医療費以外にも
各種福祉による保護の対象となるためこの歳出を含めると国庫負担はさらに膨れ上がってきます。
つまり腎臓病は多くの患者さんの問題であり、かつ大きな社会問題になっているのです。

このような切羽詰った状況で、透析に代わる次世代の治療法の開発の目的で、
当研究室は平成19年10月に新設されました。まだ生まれたばかりの小さな、
そして若い研究室ですが、将来は世界を動かすmovementの拠点となるべく日々研究をすすめています。
“我々のポリシーは常に患者さんとともに挑戦すること。”
当研究室のスタッフは母体である慈恵医大腎臓高血圧内科の医局員として、
軸足を臨床において日中は診療にあたっています。つまり診療と研究、
そして学生や研修医の教育と3足の草鞋を履いています。
研究に没頭していないので進みが遅いと思われる方も多いかと思いますが、
実はつねに腎臓病と戦っている患者さんを診療することにより、
何が問題で何を解決しなければならないかを常に意識した研究を展開が出来るのです。
したがって軸がぶれずにもっとも近道をたどることが出来ると信じております。
目の前にいる患者さんを何とかしたいという強い気持ちと、
その患者さんから逆に叱咤激励され力をもらうことにより高いmotivationを維持できるのです。
だから私は“患者様”とは呼びません。一緒に病と闘う同志であるから。
少人数ですが、ともに研究を進めている各分野のエキスパートからなる共同研究者が、
集結し、それを臨床に礎を置いた当研究室が統合し、研究を推し進めることにより、
近い将来腎臓再生による透析の回避が可能となる日を信じて邁進していく所存です。
どうぞ皆様の暖かい励ましと期待をお願いいたします。
我々と一緒に研究をしてみたいという若い研究者の方も是非気軽に御連絡ください。
東京慈恵会医科大学
DNA医学研究所プロジェクト研究部
腎臓再生研究室
室長 横尾 隆